学校教育費は「授業料」だけではない
学校教育にかかる費用を考えるとき、家庭が直接支払う金額や、授業料の有無に目が向きやすい。しかし、学校を運営するために必要な費用は、それだけではない。教職員の人件費、教材や光熱水費などの日常的な支出、校舎や設備の整備費など、複数の項目によって成り立っている。
文部科学省の地方教育費調査によると、2017年4月から2018年3月までの都道府県立高等学校の学校教育費総額は、2,575,055,879千円だった。この金額は、生徒や家庭が直接負担した額だけを示すものではなく、都道府県が設置する高校の教育活動を支えるための学校教育費全体を表している。
この統計から見えてくるのは、学校教育費が単一の費目ではなく、日々の教育を維持するための複数の支出の組み合わせだということである。
都道府県立高校の支出を分けて見る
同じ期間の消費的支出は2,198,742,060千円だった。消費的支出とは、教育活動や学校運営のために継続的に必要となる支出を捉える項目である。人件費、教材や管理に関わる費用など、学校が毎年度活動するために使われる費用が中心になる。
一方、資本的支出は189,212,778千円だった。こちらは、校舎や施設、設備など、学校の基盤を整えるための支出として読むことができる。日々の授業を回すための費用と、長期にわたって使われる環境を整える費用は、役割が異なる。
さらに、人件費は1,816,679,135千円だった。教員や学校運営を担う職員の働きは、授業、生活指導、進路に関する支援、安全管理など、学校の多くの機能に関わる。したがって、人件費の大きさは単なる給与の問題ではなく、学校教育が人の配置によって成り立っていることを示す材料になる。
| 支出項目 | 2017年4月から2018年3月までの金額 |
| 学校教育費総額 | 2,575,055,879千円 |
| 消費的支出 | 2,198,742,060千円 |
| 人件費 | 1,816,679,135千円 |
| 資本的支出 | 189,212,778千円 |
「設備」と「人」のどちらかだけでは学校は動かない
学校教育費の内訳を読む際には、施設整備費が多いか、あるいは人件費が多いかだけで学校の良し悪しを判断しないことが重要である。校舎や設備が整っていても、授業や支援を担う人が不足すれば、教育活動を継続することは難しい。反対に、人が配置されていても、学習環境や安全に関わる施設が十分でなければ、教育の条件は安定しない。
消費的支出と資本的支出を分けて見ることは、学校教育を短期の運営と長期の基盤整備に分けて考えることでもある。前者は毎年度の教育活動を支え、後者は将来にわたって使われる環境をつくる。どちらも学校の機能を維持するために必要だが、統計上は別の動きをする。
金額の大きさを「教育の中身」と結びつける
支出額が大きいからといって、それだけで教育の成果や子どもの学びやすさが決まるわけではない。学校教育費は、どのような教育活動を支えるために使われたのか、どのような職員配置や施設環境につながったのかと合わせて読む必要がある。
特に人件費は、学校で子どもと関わる時間や、授業以外の支援を支える条件と結びつく。資本的支出は、学習空間や安全面、設備の更新など、学校生活の土台に関わる。教育費の統計は、単なる支出の順位を示すものではなく、学校がどのような資源の組み合わせで運営されているかを考える手がかりになる。
国や地域によって、学校の設置者、財源、費用の分担方法は異なる。それでも、教育費を総額だけでなく、日常の運営、働く人、施設や設備という複数の層に分けて見ることには共通する意味がある。学校教育費を読むことは、教育に必要な条件がどこに置かれているのかを確かめる作業でもある。
出典
- 地方教育費調査(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003362780