教育と子どもの世界統計
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子どもの「精神的幸福度」を家計統計だけで語れるか――所得・消費・資産の分布統計が示すものと示さないもの

教育と子どもについて、世界の統計を定点観測する

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家計統計だけで、子どもの幸福感を語れるか

国際的な調査では、子どもの主観的な幸福感がしばしば話題になることがある。ただし、そうした調査がどのような設計で行われ、日本がどの位置にあるとされているのかを、本稿で扱う統計から確かめることはできない。ここで取り上げるのは、あくまで世帯の所得・消費・資産の分布を示す統計であり、幸福度そのものを測定したものではないからだ。「家計が苦しいから子どもの幸福感が低いのではないか」という推測は自然に思える。しかし実際には、経済統計と主観的な幸福度の統計は、そもそも測っているものが違う。この違いを押さえずに両者を結びつけると、誤った理解につながりかねない。本稿では、家計の分布統計そのものが何を示し、何を示していないのかを確かめることに主眼を置く。

家計の分布統計が示しているもの

日本の統計機関は、2019年1月から12月にかけての調査にもとづき、世帯類型(17区分)別に、消費支出額・資産額・年間可処分所得のそれぞれの階級ごとに、子どもの数がどう分布しているかを示す統計を公表している。これは2019年時点の分布であり、その後の物価上昇や共働き世帯の増加といった変化を反映したものではない点に注意が必要である。これらは「どのくらいの支出をする世帯に、何人の子どもがいる家庭が多いか」「どの資産水準の世帯に子どものいる家庭がどれだけ分布しているか」といった、家計の状況と子どもの数の関係を捉えるためのものである。

これらの統計からは、子どものいる世帯が経済的にどのような位置に分布しているかという「外形」は見えてくる。しかし、その世帯で育つ子ども自身が日々の生活をどう感じているかという「内面」は、これらの統計には含まれていない。

三つの指標はそれぞれ違う面を映す

所得・消費・資産という三つの指標は、いずれも「経済的な豊かさ」に関わるものだが、示す面が異なる。所得は一定期間に世帯へ入ってくる金額であり、消費支出は実際に使われた金額、資産は蓄積された財産である。同じ世帯でも、所得は多くないが資産があるために生活の余裕がある場合もあれば、逆に所得はあっても支出に追われ余裕がない場合もある。三つのうちどれか一つだけを見て「豊かさ」を判断すると、実態を見誤る恐れがある。

統計上の区分の細かさにも三者で違いがある。年間可処分所得は19区分、資産額も19区分に分けて集計される一方、消費支出額は月額・年平均推定値にもとづく38区分と、より細かく分かれている。これらはいずれも世帯類型17区分と組み合わせたうえで子どもの数の分布が示される形になっており、同じ「経済的な豊かさ」でも、指標によって切り取り方の粒度が異なることがうかがえる。ただし、今回参照できた資料は、世帯類型17区分と各指標の階級を組み合わせた分類そのものの存在を示すにとどまる。どの階級にどれだけの世帯・子どもが集中しているかという実際の数値までは、本稿の時点では確認できていない。分布の偏りを具体的に論じるには、この分類にもとづく実数値のデータを別途確認する必要がある。

指標何を測るか区分数対象期間
年間可処分所得世帯が自由に使える年間の収入19区分2019年1月〜12月
消費支出額月額・年平均で実際に使われた金額38区分2019年1月〜12月
資産額世帯が保有する財産の総額19区分2019年1月〜12月

経済統計だけでは説明が難しい理由

子どもの精神的な幸福感は、家庭の経済状況だけでは説明しきれない、数値化しにくい要素に左右されると一般に指摘される。今回取り上げた統計が示すのは、世帯類型17区分という外形的な分類にもとづく所得・消費・資産の分布にとどまる。世帯を17種類、指標ごとに19〜38の階級に細かく分けてはいても、それはあくまで世帯という単位の経済状況を分類したものであり、子ども本人がその世帯での暮らしをどう受け止めているかを尋ねたものではない。したがって、家計の分布統計は子どもを取り巻く環境の一側面を示す手がかりにはなっても、精神的幸福度の背景をそれだけで説明する材料にはならない。

統計を読むときの注意点

今回取り上げた統計は、あくまで世帯がどの階級にどれだけ分布しているかを示す「分布統計」であり、個々の子どもの主観的な評価を尋ねたものではない。また2019年という一時点の調査であることも踏まえておく必要がある。子どもの幸福感に関する調査結果を理解しようとするときは、経済状況に関する統計と、子ども自身の意識や感情を尋ねる調査とを区別し、両者を安易に一本の因果関係で結ばないことが大切である。異なる種類の統計を組み合わせて読む際には、それぞれが「何を測り、何を測っていないか」、そして「どこまで具体的な数値を示しているか」を常に確認する姿勢が求められる。

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