教育と子どもの世界統計
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教育費は「予算のなかの優先順位」で見る――政府支出に占める割合と段階別配分の読み方

教育と子どもについて、世界の統計を定点観測する

トップ読みもの

「いくら使ったか」より「何のなかの、どれだけか」

教育にかけるお金を比べるとき、よく使われるのは国内総生産(GDP)に対する比率です。ただ、それだけでは見えないものがあります。GDP比は「国全体の経済規模に対する大きさ」を示す指標であって、「その国の政府が、限られた予算のなかで教育をどのあたりに置いたか」を直接には教えてくれません。

そこで役に立つのが、政府支出の総額に占める教育費の割合という指標です。世界銀行は「Government expenditure on education, total (% of government expenditure)」として、OECDも「Share of total government expenditure on education」として、この視点のデータを公開しています。分母が経済全体ではなく政府予算になることで、社会保障や防衛、公共事業などと並べたときの教育の位置づけが見えてきます。

同じ「教育費が多い/少ない」という話でも、分母が変わると結論の意味は変わります。経済規模に対して控えめでも、政府予算のなかでは大きな比重を占めている、という組み合わせはあり得ます。逆もまた同様です。どちらか一方だけを見て「教育を重視していない」と断じるのは、統計の読み方としては急ぎすぎです。

分母の違いを整理する

指標のタイプ分母主に分かること
教育費の対GDP比経済全体の規模経済力に照らした教育投資の厚み
教育費の対政府支出比政府支出の総額予算配分のなかでの教育の位置づけ
段階別の配分比教育費の総額初等・中等・高等のどこに重心があるか
生徒一人当たり支出(一人当たりGDP比)在籍者数と国民の所得水準学ぶ側から見た資源の厚み
公私・国外の負担割合教育機関への支出全体家計や外部資金がどこまで担っているか

教育費の「中身」を分ける

総額を見たあとは、その内訳に進むと理解が深まります。世界銀行には初等(Expenditure on primary education)、中等(secondary)、高等(tertiary)それぞれについて、教育費全体に占める割合を示す指標があります。これは教育予算の重心がどの段階にあるかを示すものです。

ここで注意したいのは、配分比の高低をそのまま「重視の度合い」と読まないことです。各段階の在籍者数は国や年によって大きく異なります。子どもの人口構成が若ければ初等段階の比重は自然に大きくなり、進学率が高ければ高等段階の比重が増します。だからこそ、配分比とあわせて「生徒一人当たり支出」(Government expenditure per student)を見る手順が生きてきます。前者は予算の形を、後者は一人の学習者に届く資源の厚みを表しており、役割が違います。

誰が払っているのか、何に払っているのか

もうひとつ、見落とされやすい軸があります。「政府支出」という枠のなかだけを見ていると、家計や民間、国外からの資金がどれだけ教育機関を支えているかが視野から外れます。OECDは、教育機関への支出を政府・民間・国外という出どころ別に分けて示すデータ(Distribution of government, private and non-domestic expenditure on educational institutions)を用意しています。公的支出が控えめに見える国でも、家計の負担が大きい場合があり、逆もあります。負担の分担構造まで見て、はじめて「教育にかかるお金の全体像」に近づきます。

支出の性質別の内訳も同じ意味を持ちます。OECDには教職員の給与など人件費に関するデータ(Expenditure on staff compensation in educational institutions)があります。教育費の多くは人に対する支払いであり、その割合が高いか低いかは、施設整備や教材、デジタル環境への配分余地と表裏の関係にあります。総額が同じでも、内訳が違えば学校で起きていることは違います。

比較の前に確かめたいこと

国際比較のデータを扱うときは、いくつかの前提を確認しておくと安全です。第一に、対象年が国ごとにそろっていない場合があること。第二に、「政府支出」に地方自治体の支出をどこまで含めるかは制度によって異なること。第三に、教育段階の区切り方が各国の学校制度と完全には一致しないこと。第四に、奨学金やローンなどの学習者向け給付を教育費に含めるかどうかで数値が動くことです。

こうした注意点は、比較を無意味にするものではありません。むしろ、どの指標を選び、何と何を並べるかを意識的に決めるための手がかりです。教育費の話は「多い/少ない」の一言で終わりがちですが、分母を変え、内訳に分け、負担の出どころをたどると、同じ数字の並びから読み取れることは何段階も豊かになります。

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