在籍者数の推移は、数字だけでは語れない
特別支援学級に在籍する子どもの数は、教育の場を考えるうえで重要な指標です。ただし、その数が増えた、あるいは減ったという変化を見つけても、それだけで子どもの状態や学校の良し悪しを判断することはできません。人数の変化には、学校の学級編制、調査の区分、教育の場の選択、記録の仕方など、複数の要素が関わるからです。
今回確認できた資料には、文部科学省の「編制方式別学級数」や「学級編制方式別生徒数」に関する表があります。これらは、2009年、2010年の資料として公開されています。一方、資料の提示内容には、特別支援学級の在籍者数そのものの数値は示されていません。そのため、ここで具体的な増加率や全国の合計人数を示すことはできません。
この点は、統計を読むときの大切な出発点です。表の題名に「生徒数」とあっても、それが特別支援学級全体の在籍者数なのか、特定の設置者や教育段階だけを示すのかによって、意味は変わります。また、「学級数」と「在籍者数」は別の指標です。学級数が増えていても、1学級あたりの人数が変わっている可能性があります。逆に、在籍者数が変わらなくても、学級編制の方法によって必要な学級数が変化することがあります。
今回確認できる資料の範囲
| 資料の種類 | 確認できる時期 | この資料から読み取る際の注意 |
| 編制方式別学級数 | 2009年、2010年 | 学級の数を示す表であり、在籍者数とは分けて読む必要がある |
| 学級編制方式別生徒数 | 2009年、2010年 | 生徒数の範囲や区分を確認しないと、全国全体の人数とは限らない |
| 特別支援学校のいじめ認知件数 | 2020年3月2日時点 | 特別支援学級の在籍者数の推移を示す資料ではない |
| 特別支援学校の学校教育費総額 | 2017年4月から2018年3月 | 在籍者数ではなく、特別支援学校にかかった教育費の総額である |
この表からも分かるように、特別支援学級、特別支援学校、学級数、生徒数、いじめの認知件数、教育費は、それぞれ異なる対象を示します。特別支援学校について、2020年3月2日時点のいじめ認知件数は2,044件でした。しかし、これは特別支援学級の在籍者数を表す数値ではありません。また、2017年4月から2018年3月までの特別支援学校の学校教育費総額は、全国で989718835千円でしたが、これも学級在籍者数の推移を直接示すものではありません。
「増えた」から先に考えること
在籍者数の変化を読むときには、少なくとも三つの確認が必要です。
第一に、対象となる教育の場をそろえることです。特別支援学級と特別支援学校は、名称が似ていても同じ統計ではありません。通常の学級に在籍しながら支援を受ける子どもが含まれるかどうかも、資料によって異なります。
第二に、人数と学級数を分けることです。学級数は学校がどのように集団を編制しているかを示す指標です。在籍者数と組み合わせて初めて、学級規模や教室の条件を考える手がかりになります。
第三に、時系列を同じ条件で比較することです。2009年と2010年の表を比べる場合でも、表の区分、設置者、教育段階、集計方法が同じかを確かめる必要があります。条件が違う数字を並べると、実際には存在しない変化を読み取ってしまうおそれがあります。
必要なのは「人数」だけではない
特別支援学級の在籍者数は、支援の規模を考えるための重要な材料です。しかし、その数字だけでは、子どもがどのような支援を受けているのか、教員や専門職が足りているのか、学校と家庭・地域の連携が機能しているのかまでは分かりません。
在籍者数の推移を社会の変化と結びつけて考えるには、学級数、教員構成、教育費、学校生活上の課題など、複数の統計を同じ時間軸で確認する必要があります。今回の資料には、特別支援学校の教員構成に関する表も、2009年、2012年、2015年、2016年から2017年にかけての資料として示されています。ただし、提示された情報には具体的な人数がないため、ここでは教員配置の増減を断定できません。
大切なのは、数字を大きく見せることではありません。どの子どもを対象に、どの単位で、どの期間を比べた数字なのかを明らかにすることです。その確認があって初めて、特別支援学級の在籍者数の推移を、教育の場を必要とする子どもへの支援の変化として、国や地域を越えて考えられるようになります。
出典
- 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003408936
- 地方教育費調査(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003363659
- 編制方式別学級数(設置者別)(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003017978
- 学級編制方式別生徒数(設置者別)(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003017983
- 編制方式別学級数(設置者別)(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003020987
- 学級編制方式別生徒数(設置者別)(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003020992
- 免許状別・職名別教員構成に関する資料(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003019590
- 免許状別・職名別教員構成に関する資料(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003086417
- 免許状別・職名別教員構成に関する資料(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003108000
- 免許状別・職名別教員構成に関する資料(文部科学省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003303375